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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第21章 まもなく境界線に、電車が参ります
不意に光の綿虫達がさあっと左右に避け、来た道を逆に戻っていく。神依は慌てて振り向いたが、虫達は役目は果たしたと言わんばかりに呆気なく去り、また前を向けば、皆が皆ある一点で方向転換してくるのが分かった。
 「ん……」
目を凝らしてその先を見れば、明らかに人工物と思(おぼ)しき四角い建物が、霧のなか朧に浮かんでいる。
「みんな、ここに案内してくれたの? ありがとう──」
帰っていく綿虫達を目で追いながら語り掛ければ、返事の代わりか、一匹が神依に近付きその頬を優しくくすぐっていった。
 あの蓮の神様の眷族なのだろうか。虫達が去った後の沼地にはぽつぽつと、小さな蓮の葉や花のつぼみが残っているだけだったが……その間には、前方に見えた四角い建物が数多く泥に埋もり、角の頭を突き出して朽ちていた。
 神依がそれを眺めていれば、その内の一つがぬぷぬぷと呑まれ、また沼の淵が広がる。



【3】

 その淵は、神依の知らない世界の始まりだった。
 空を突き抜ける巨大な、けれども平らに磨き抜かれた石と鋼の建物。黒い紐で等間隔に結ばれ一直線に天に向かう柱や、その頂から横にせり出す黒い三つ目の長細い箱など──
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