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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第21章 まもなく境界線に、電車が参ります
 「ありがとうございました」
「キュウ」
そしてもう一度頭を垂れれば、
「えっ……」
それは神依の目の前で水を吸うようにみるみる茎に呑み込まれ、そこから再び小さな、葉のつぼみが伸びて生まれた。まだくしゃりとたたまれた色若い、黄緑色の小さな葉のつぼみ。
 「……」
神依はぽかんとそれを眺めていたが、やっぱり神がいたのだとようやく頭で理解して立ち上がる。頂戴した葉は神依一人なら充分に傘の役割を果たしてくれる大きさで、立ち去る前にもう一度だけ頭を下げた。
 ただ思うまま茎を断っていたら、今頃どうなっていたかしれない。それは感謝と畏怖の混ざった拝礼だったが、巫女として過ちを犯さなくてよかったと安堵もした。それは、自分の大切な人にも通じる道だ。
 そんなちょっとの気付きと行動が非道にも人道にも変わってしまう。だからこそ、日々の暮らしの中で神様に嫌われるのはすごく寂しくて、悲しいことのような気がした。そして、恐い。

***

 蓮の傘をさしてから、雨はしとしとと止むことなく降り続けていた。辺りには薄い霧が漂い、神依は今まで以上に足元に注意を払いながら進む。ただ光の綿虫の群れが付き添うように神依の進む方に向かい、視界を照らしてくれていた。
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