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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第21章 まもなく境界線に、電車が参ります
 神依もこぼれる前に涙を拭い、そんな子龍に微笑みながら、素戔鳴の言葉を思い出していた。
 慕う男が最後まで、自分を求めてくれていたと「父」が言ってくれた。それが今の自分に取って、どれだけ切なく、狂おしく愛しいか知れない。だからできることならば……もう一度その男の隣で同じ時を過ごし、いろんなものを見て、話して、分かち合って生きてみたかった。過ぎた秋も、訪れた冬も。まだ知らない春も、懐かしい夏も……今度こそ全部、あの優しい男神の隣で生きてみたかった。
 好きな菜があるならそれを刻んで、好きな汁があるならそれを煮込んで。
 そして日々の暮らしでは母がそうであったように心を尽くし、穏やかな夜には父がそうであったように、あの自分よりも大きな手で優しくそれを讃えたり労ったり、引き留めたりして欲しかった。
 それを想えば、体の芯がきゅうっと甘く震える。気付いたら右肩に手が伸びていて、その久々の仕草に神依はどこか、安心した気持ちになって体の力を抜いた。
 それからおにぎりの包みを丁寧にたたみ、少し長い休憩を取った後にもう一度立ち上がる。
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