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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
男が灯す光は今は柔らかく、その光を反射して、きらきらと尾を引くように二匹の魚が泳ぎ回って足元をくすぐっている。
こんなにも豊かな水が湛えられても、この子達はここにいる。きっと構ってほしいのだと思えば、何だかひどく満たされたような気分になった。強張っていた眉間や頬の肉がすうっと柔らかくなるのを感じて、またそれを外から見ていた日嗣も柔く笑みを返すと、剣を抜き鞘へと戻した。
“──……どうして”
女の声はやはり二重に、けれどももう、ほとんど一つのものとなって日嗣の耳に届いていた。
「……貴女を斬っては、きっと神依が悲しみます。それに……いえ。単に私に、貴女という神を斬る度胸が無かっただけです。だからあとは……貴女がどうするか、選べばいい。荒ぶる御霊も、今は和(にぎ)なるものなれば……」
“──……”
女の声は答えない。代わりに神依の姿が揺らぎ、陽炎のようになって空気に滲んでいく。それは光の具合によって、神依にも玉衣にも、日嗣が関わってきた全ての女達の面影にも変わって見えた。少女から大人へ……大人から母へ。何かが異なった存在でありながらも、その全ての境界を曖昧にぼかして。
そして最後に骨蜘蛛から生えていた、美しい女の姿になって頷くような仕草を見せると、そっと出口の方を指し示してくれる。行け、と。
こんなにも豊かな水が湛えられても、この子達はここにいる。きっと構ってほしいのだと思えば、何だかひどく満たされたような気分になった。強張っていた眉間や頬の肉がすうっと柔らかくなるのを感じて、またそれを外から見ていた日嗣も柔く笑みを返すと、剣を抜き鞘へと戻した。
“──……どうして”
女の声はやはり二重に、けれどももう、ほとんど一つのものとなって日嗣の耳に届いていた。
「……貴女を斬っては、きっと神依が悲しみます。それに……いえ。単に私に、貴女という神を斬る度胸が無かっただけです。だからあとは……貴女がどうするか、選べばいい。荒ぶる御霊も、今は和(にぎ)なるものなれば……」
“──……”
女の声は答えない。代わりに神依の姿が揺らぎ、陽炎のようになって空気に滲んでいく。それは光の具合によって、神依にも玉衣にも、日嗣が関わってきた全ての女達の面影にも変わって見えた。少女から大人へ……大人から母へ。何かが異なった存在でありながらも、その全ての境界を曖昧にぼかして。
そして最後に骨蜘蛛から生えていた、美しい女の姿になって頷くような仕草を見せると、そっと出口の方を指し示してくれる。行け、と。

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