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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
何故かふと男が笑う。けれどもそれは嫌なものではなくて、なんだかとても美しい場所で、温かい眼差しに包まれて得たもののような気がした。
そして少女は、またもう一度その温もりが欲しくなって、おそるおそる剣に向かって腕を伸ばす。さっきまで男と自分の唾液が絡んでいた指先には、世界ができる前と同じようなどろどろとしたものがまとわりついていた。けれども男はそれを嫌がらない。そしてゆっくりと、自分より低く低く頭を垂れてくれた。
「──掛けまくも畏き、伊邪那美大神と讃え奉る……」
『……!』
それは、信仰の詞(ことば)だった。
その詞が終わると共に、まるで雨粒が玻璃を滑るように、少女が触れた場所から刃を伝って水が零れる。その水が泥に落ちるとそこからこぽりと清水が湧き出し、中から小さな小さな魚が二匹跳ねて、少女に水を飛ばしてきた。
『……うそ──』
少女は始め呆然とそれを眺めていたが、湧き出る水が泥を流し再び川を満たし始めると、どうにもお尻が冷たくて……ついさっきまで言うことを聞いてくれなかった手と足に力を入れて、おそるおそる立ち上がる。
水の行方を目で追えばその流れに沿って炎が消えて、その分だけ辺りは徐々に薄暗くなっていった。でも、それを怖いとは思わなかった。
そして少女は、またもう一度その温もりが欲しくなって、おそるおそる剣に向かって腕を伸ばす。さっきまで男と自分の唾液が絡んでいた指先には、世界ができる前と同じようなどろどろとしたものがまとわりついていた。けれども男はそれを嫌がらない。そしてゆっくりと、自分より低く低く頭を垂れてくれた。
「──掛けまくも畏き、伊邪那美大神と讃え奉る……」
『……!』
それは、信仰の詞(ことば)だった。
その詞が終わると共に、まるで雨粒が玻璃を滑るように、少女が触れた場所から刃を伝って水が零れる。その水が泥に落ちるとそこからこぽりと清水が湧き出し、中から小さな小さな魚が二匹跳ねて、少女に水を飛ばしてきた。
『……うそ──』
少女は始め呆然とそれを眺めていたが、湧き出る水が泥を流し再び川を満たし始めると、どうにもお尻が冷たくて……ついさっきまで言うことを聞いてくれなかった手と足に力を入れて、おそるおそる立ち上がる。
水の行方を目で追えばその流れに沿って炎が消えて、その分だけ辺りは徐々に薄暗くなっていった。でも、それを怖いとは思わなかった。

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