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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
“──……いいの。この子はもともと私の一部……私が甘やかして、私が肥えさせてしまった私の心の一部なのです。今ならその剣と私とで、この子を禊ぎ、私の魂に還すことができる。早く……でないと、あなたが本当に間に合わなくなる。あの子もまた、……待っている人がいるの”
風に誘われてそちらを見れば、最初に手を引かれて誘(いざな)われた、あの岩肌の裂け目が崩落で埋まりかけている。
 「……」
日嗣は少しの間を置くと干上がった川底まで降り、少女の前まで歩み出る。見開かれた少女の黒い瞳には、背後で燃え盛る大火が映っていた。
『嫌……また、殺すの……、あなたはまた、……』
「……私にできることが、それだけであるならば」
『……』
少女はその炎に何かしらの感情を託し、日嗣を睨む。それは怯えた野良猫に似ていた。恐怖のあまり激しい威嚇をして、けれども人恋しくて……なのに決して、分かり合えはしない。
 『……永代、あなたの血とあなたに関わった女達に、この悔しさと苦しみ、哀しみが繰り返せばいいのに。そうすれば、やがては同じものを分かち合える子も現れるかもしれない。ううん──案外それは、すぐそこに来ていて……もうすぐにでも、私は孤独ではなくなるかもしれない。殺しなさいな……神依の姿をした私を』
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