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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 しかし今、それ以上にみすぼらしいのは自分だった。炎が、男が怖くて上手く声が出せない。かちかちと歯が鳴るほど体が震えて、腰が抜けて駆け出すことすらもう出来ない。
 『見な、見ないで……見ないで……。ごめ……さい……、ごめんなさい、……』
「……」
そうして身を護るように丸く縮こまり、泥まみれになってぐずぐずと涙を流し鼻をすするだけの少女に、やはりその姿のまま、神依と……童女の姿になっている祖母を重ねた日嗣は再び惑うた。
 何が起きたか自分でも分からないまま、ただ神々が託してくれた宝に護られ……それに怯えるだけのこれは、何の加護も持たないただのひとりぼっちの子供だ。無慈悲に斬ってもいいものか。或いは今ならば……、しかし、と。
 ──だが今度は明確に、その答えが返ってきた。
 “──……斬って下さい。”
「……」
それは悲哀に満ちた女の声。炎と風に混じり、かそけく日嗣の耳元に届く。同じくここだけ香を焚いたように花の香りがして、日嗣はようやく神依が視ていた女神と繋がれたことを感じた。洞に入った時のように鏡を取りそこを覗き込めば、こことよく似た、けれども異なる場所がほのかに映る。
 「貴女は……いえ。……よろしいのですか」
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