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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
『下手に暴れるから。……気持ち悪い? 大丈夫?』
「……」
そう呟きながらも、もう女の笑みが崩されることはない。
いっそ気絶でもした方が楽だったのに、そこまではさせて貰えなかった。ただまだ音が聞こえる、目が見えるとそれだけ安堵して、日嗣は定まらない視線を女に向ける。
女は時が巻き戻されているかのようにその上半身を胴に沈ませ、骨の脚を畳みながら黒く波打つ腹や頭を人の形に変えていく。
人影は子供が小さな段差を選んで歩く時のような足取りで、長い裳裾をひらひらと左右に遊ばせていた。御霊祭の時と同じく、小さな足で拍を刻んで。そして吊るされた自身の足元に立つ頃には、その姿は形も色も完全に少女のものに戻っていた。
「……み……より」
それを滲む視界に映した日嗣は、何を思うでもなくその名を口にする。
『嬉しいわ、あなた。やっと私のものになってくれるのね』
しかし返ってきたのは、その名の少女とは異なる声。口調。最悪だった。
「……どうせなら、最初の……神依に、嬲られると思い込める方が、ましだった」
『あら、あの子もあなたも見掛けに寄らず、そういう趣味だったの?』
「ああ……だがお前の方が、性悪(しょうわる)だ」
「……」
そう呟きながらも、もう女の笑みが崩されることはない。
いっそ気絶でもした方が楽だったのに、そこまではさせて貰えなかった。ただまだ音が聞こえる、目が見えるとそれだけ安堵して、日嗣は定まらない視線を女に向ける。
女は時が巻き戻されているかのようにその上半身を胴に沈ませ、骨の脚を畳みながら黒く波打つ腹や頭を人の形に変えていく。
人影は子供が小さな段差を選んで歩く時のような足取りで、長い裳裾をひらひらと左右に遊ばせていた。御霊祭の時と同じく、小さな足で拍を刻んで。そして吊るされた自身の足元に立つ頃には、その姿は形も色も完全に少女のものに戻っていた。
「……み……より」
それを滲む視界に映した日嗣は、何を思うでもなくその名を口にする。
『嬉しいわ、あなた。やっと私のものになってくれるのね』
しかし返ってきたのは、その名の少女とは異なる声。口調。最悪だった。
「……どうせなら、最初の……神依に、嬲られると思い込める方が、ましだった」
『あら、あの子もあなたも見掛けに寄らず、そういう趣味だったの?』
「ああ……だがお前の方が、性悪(しょうわる)だ」

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