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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
それは見えない巨大な杵(きね)で内腑を圧され、また捏ねられているかのような衝撃だった。猿彦が空間を割く時とも異なる、巨大な龍が風を分かつ時とも違う、透ける空気にそれだけの力があったことを、日嗣は初めて思い知らされた。
 「がはッ……!」
その圧迫に喉が勝手に蠢き、空気を吐き出す。何とか体勢を立て直そうともがいても、それはますますに周囲の糸を巻き付けてしまうだけだった。内部から込み上げる不快感と、外部から襲い掛かってくる圧迫と砂や石の礫(つぶて)。肉を挽かれている心地だった。それは多分、本当に僅かな時間の暴力だったのだろうが、日嗣には永遠に続くもののように思えた。視界の端に入り込む逆さまの女は、笑っている。


【6】

 『……』
やがて、洞内に夕間暮れの静寂が戻る。
 放ったものを全て内に戻した骨蜘蛛はゆったりと地に降り、再びその姿を収縮させ、形を変えながら日嗣へと近付いた。
 見えない暴力に晒され、それでも逃げるに逃げられなかった男は磔(はりつけ)の罪人のような惨めったらしい姿で、まるで見せ物のように洞の中央に吊るされていた。朦朧と意識だけは保っているようだったが、剣は足元に取り落とされている。
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