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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
相手はこの世界を創った神。生も死も、あらゆる命の源である別格の神なのだ。未だ生しか知らぬ者が立ち向かうには、無謀過ぎる。
 無策に力を振るい、しかしその力が及ばなければ命を奪えたとしてもこの執着は永劫残るだろう。そしてそれは蛭や蛇の尾のように自分に絡みついて、多分──自分が想う女の命や心さえ蝕んでいく。
(……駄目だ)
それだけは、絶対にあってはならない。
 ならばどうするか──。
 日嗣は頭の中で独り言(ご)ちり、しかしその度に具体的な打開策も見付けられず、結局何度も何度も悪態を吐くはめになる。
 けれどもそうやって考えれば考える程、日嗣の自由は骨蜘蛛に削り取られてしまっていた。
 その蜘蛛の腹部から滴る白い粘液の塊が、上も下も横も彼女が動けるあらゆる場所にこびりつき、空気の流れに乗って一筋一筋糸へと姿を変えていくのだ。そしてそれは壁と壁を結び、洞全体を糸玉にするように幾重にも交差していく。
 もちろん彼女はそれに動じない。惑うことなく糸を選んでそれを繰(く)り、更に複雑な螺旋(らせん)を描いては日嗣の間合いを狭めていく。
 ──一度でもそれに触れれば、きっと一気に絡め取られて二度と放してもらえない。
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