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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 愛情も母性も、時折男には理解し難い一面を見せる。時に美しく、時に醜く。けれどもそれは、そうやって対極でありながら一つとなって円をなす。だからこそ一方的に、男が目を背けたり責めたりしてはいけなかった。
 (……どうする)
 ……斬ってもいいのだろうか、と日嗣は自分に問う。そんなものを、自分が手に掛けてしまっていいのだろうか、と。
 骨蜘蛛の動きはその巨体に似合わず俊敏で、鎌のように振り下ろされる一撃も、巣の上を動くような横歩きも、日嗣には慣れないものだった。一太刀のために距離を詰めても横一歩にかわされ逆襲されて、いいように翻弄されてしまう。髪も衣も、はためく物がその犠牲となり、塵となって薄闇に喰われていく。
 だがそれは、そういう迷いがあるせいかもしれない。もう一歩を踏み込めず、退いてしまう。
 蛟の時のように剣気で祓えればいい。握る剣はかつて、素戔鳴に退治された大蛇の尾から顕された剣だった。八つの頭を持つ大蛇。その後は天照に献上され今は自らの手元にあるが、剣に宿るそもそもの力は、自らを凌ぐほど強大だった。
 (……しかしそれを頼りにしたとしても、今回は打ち勝てるか分からない)
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