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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
最後にその上に切れ込みが入り──その裂け目から、今見てきたものから生まれるにしてはあり得ない程に美しい、女の上半身がずるりと這い出してくる。白磁の肌、磨かれた玉のように滑らかな曲線。長い髪は情事の後のようにしっとりとして、艶やかで──。
女は最初、生まれたての獣のように胴にすがりついていたが、すぐに細い腕を突っ張り、起き上がろうとしていた。
「……」
そしてここに至り、日嗣はようやく剣を抜いた。
鋼が空(くう)を横切る音に反応してか、女はがばりと顔を上げ日嗣を見上げる。
骨と腐肉、そして──やはり天照や月読にも似た美貌の女を混ぜてできた大蜘蛛。
始父、伊邪那岐命が目の当たりにした──愛する妹(いも)の、死後の姿。女神はそれより遥かに異形のものとなって、日嗣の前にその姿を顕現させた。
「私を──喰らう気ですか」
『ふふ──雌蜘蛛は雄を食べるものでしょう?』
怖れに呑まれぬよう、語り掛けてはみたものの──本当に返事があるとは思っていなかった日嗣は、何故か笑ってしまった。そのくせ口の中は乾いていて、剣を握る手には嫌な汗が滲む。
女は最初、生まれたての獣のように胴にすがりついていたが、すぐに細い腕を突っ張り、起き上がろうとしていた。
「……」
そしてここに至り、日嗣はようやく剣を抜いた。
鋼が空(くう)を横切る音に反応してか、女はがばりと顔を上げ日嗣を見上げる。
骨と腐肉、そして──やはり天照や月読にも似た美貌の女を混ぜてできた大蜘蛛。
始父、伊邪那岐命が目の当たりにした──愛する妹(いも)の、死後の姿。女神はそれより遥かに異形のものとなって、日嗣の前にその姿を顕現させた。
「私を──喰らう気ですか」
『ふふ──雌蜘蛛は雄を食べるものでしょう?』
怖れに呑まれぬよう、語り掛けてはみたものの──本当に返事があるとは思っていなかった日嗣は、何故か笑ってしまった。そのくせ口の中は乾いていて、剣を握る手には嫌な汗が滲む。

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