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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
「……」
 そうして息を切らしながら思いの丈をぶつけてきた少女に、日嗣は何も答えなかった。ただどこかで、我儘を言ったり癇癪を起こした時の祖母の姿を思い出し、似ていると思う。母子と言えば祖母は嫌がるかもしれないが、よく似ている。
 そして少女が何事かを訴えている間中、ずっと気にかかっていたことがあった。それはあの時──根の国に降りたいと、神々の前で乞い願った時のこと。

 ──手を裂く鋭き葉を伸ばすより
 ──実がなったのなら、頭(こうべ)を垂れなさい

 自分に恋を唆し、或いはあの局面でそう語りかけてくれたその女神とこの少女とは、少し何かが違う気がする。また月読や素戔鳴、自らの子でもある男神に語らせたそれとも、彼女は異なる。
 逆に、始めから全て違っていたのだろうか。自分をここに招き入れるために神依と引き合わせ、その姿や振る舞いを写し取るために己を偽っていたのだろうか。
 ──自らの欲望を満たすために、神依を利用して、見捨てて?
 (……いや、そんなはずはない。ないはずだと、信じたい)
日嗣は視線を、先ほど誘われた出口らしきものへと移す。
 月読は、神依が彼女に慈しまれていると語った。また素戔鳴は、神依が彼女の巫女であると認めていた。
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