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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 日嗣が何も答えず腕の力を緩めると、少女は笑みを崩すことなくなお日嗣を誘(いざな)う。
「……帰りましょう、二人で、みんなのところへ。そしたら私達、きっと今度こそ幸せになれると思うんです。──今まで出来なかった分、私も今度こそあなたの巫女としてあなたに尽くします。私の全てを捧げて、魂のひと欠片まで日嗣様のものになります」
「……」
手を引かれ、少女が向かおうとする先を見れば確かにそちらには、何処かへ続いていそうな岩壁の裂け目があった。
 この黄昏のせいか、先は見えない。
「……あれは何処へ? 淡島へ続いているのか」
「そう──ううん、何処へでも。高天原でも、豊葦原でも。もし日嗣様が行きたい場所があるなら、私が何処へでも誘ってあげます」
「……そうか」
日嗣が微かに笑んで頷けば、少女は一瞬目を丸くして、それから照れたようにほんの少し頬を赤らめてはにかむ。
「日嗣様──じゃあ、これからは、ずっと一緒に」
「……いや」
その姿と仕草は、開く時を待ち望むつぼみのように日嗣の心を柔く抱いてくれたが、日嗣は少女の手をそっと離すと静かな口調でそれを拒む。
 ……分かっている。どれだけその姿が自分が恋した少女でも、やはりこれではどこか、違うのだ。
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