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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 少女は日嗣の汚れた衣に顔を埋め、いじらしいくらいその身を胸と腕とに託してくれる。
「お前は……」
「日嗣様──嬉しい、やっと会えた。日嗣様ならきっと来てくれるって、私、ずっとずっと信じてました」
「……」
やっと出せた声は、かすれていた。しかし間近で聞く少女の声は、確かに日嗣に懐かしさをもたらした。何ともこそばゆい、嬉しい懐かしさ。
 しかもそれは声だけではなく、髪も頬も……少女はまるで一枚皮を脱いだように、日嗣と二人、一番楽しい時を過ごしていた頃の姿となってこの場に存在していた。惨劇の痕も、陵辱の跡も何も無い。
 そして少女は会えなかった分を埋めるように一度、日嗣の胸に頬を擦り寄せ甘えると、にこにこと笑いながら楽しそうに日嗣を見上げた。
 「どうしてこっちを選んでくれたんですか? 私の家へ、行こうとは思わなかった?」
「……それは」
日嗣はただ、何を問われているかだけを脳内で理解して答える。
「俺は禊や童と……蜘蛛神とも約束した。……神依と二人で戻ると約束したから……だから俺一人が、そこに向かう訳にはいかない」
「ふふっ……嬉しい。……禊や童やみんなのことも、大切に想ってくれてありがとう。やっぱり、日嗣様は優しい」
「……」
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