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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
ただその豊か過ぎる流れが花の陸を分かち、また日嗣と少女の間を隔てている。
しかしその距離さえ劇的で。
運命に引き裂かれた恋人達が再会するのなら、やはり殺風景な砂浜よりは、こんなにも美しい空気と花の香りに包まれて、世界から祝福される方が良いとも思ってしまう。
そして少女は日嗣と目が合うと、その花群の中で和やかに目を細めた。
(……どこかで見た)
空も無いのに緋色に染まる空気。一面、夕焼けの色を被せた花の海で、日嗣は少女と向かい合う。
その姿に思わず、唇が「神依」と紡ぎかける。しかしそれを意思で押し留めれば、少女は焦れったそうに困った笑みを浮かべ、待ち切れないと言わんばかりに、自ら跳ねるようにしてこちらへ駆けてきた。
途中花弁を散らし、転けそうになり──それでも楽しさを含ませた足取りで川を渡ると、
「──日嗣様!」
飼い主にじゃれつく犬のように、無邪気に日嗣に抱きついてきた。
「……っ」
日嗣は反射的にそれを受け止め、その勢いに危うく自分も転けそうになる。それを避けようと四肢に力をこめ体の軸を直せば、その四肢の細胞の一つ一つに少女のぬくもりが染み込んできた。
しかしその距離さえ劇的で。
運命に引き裂かれた恋人達が再会するのなら、やはり殺風景な砂浜よりは、こんなにも美しい空気と花の香りに包まれて、世界から祝福される方が良いとも思ってしまう。
そして少女は日嗣と目が合うと、その花群の中で和やかに目を細めた。
(……どこかで見た)
空も無いのに緋色に染まる空気。一面、夕焼けの色を被せた花の海で、日嗣は少女と向かい合う。
その姿に思わず、唇が「神依」と紡ぎかける。しかしそれを意思で押し留めれば、少女は焦れったそうに困った笑みを浮かべ、待ち切れないと言わんばかりに、自ら跳ねるようにしてこちらへ駆けてきた。
途中花弁を散らし、転けそうになり──それでも楽しさを含ませた足取りで川を渡ると、
「──日嗣様!」
飼い主にじゃれつく犬のように、無邪気に日嗣に抱きついてきた。
「……っ」
日嗣は反射的にそれを受け止め、その勢いに危うく自分も転けそうになる。それを避けようと四肢に力をこめ体の軸を直せば、その四肢の細胞の一つ一つに少女のぬくもりが染み込んできた。

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