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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 (神依──俺は今こそ、お前に会いたい)
そのためには、ここで足踏みしている訳にはいかない。だから日嗣は祈る時のように胸元で手を握り、乞う。
(神依、今度こそお前を俺の元へすくいあげて、二度と手離すようなことはしない。だからお前も俺を求めてくれ……。そして同じように、神依を想う全ての神と人の祈りよ……どうか俺を、神依の元へ導いてくれ)
 そうして再び目を開けば、それを慶ぶように闇の花が開く。樹のうろのように口を広げていた巨岩の裂け目から闇があふれて花の形をなし、幾重にも織り畳まれた透けるほどの花弁をほころばせ、ふわりふわりと日嗣を包む。
 視界も同じように黒の紗を帯び、けれども日嗣はそれを拒まなかった。
 それをなお嬉しく思うよう薄い闇が日嗣を抱き、それに促されるまま前へと進めば、
「──…」
不意にぱちゃりと足が冷たい水を踏んで、それと同時に日嗣は何かの境を越えたことに気付いた。
 裳が水にさらされて下を見れば、闇の紗向こうに、美しい緑を湛えた水と白い砂が流れているのが確認できた。ごく浅い川だった。
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