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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
明らかに招かれているような不自然さに、いよいよこの国の深部に近付いているのだという思いがして……日嗣は身動(みじろ)ぎもせずじっとその空間の裂け目を見つめた。
(……)
この先に誰が待っているのか、自分は知っている気がする。そしてそれがどれだけ正しいかも知っている。また確かに進む先はこちらでいいのだと──根拠の無い何かが胸の奥で訴えてもいて、いつの間にか知らない誰かが、自分の中に棲みついてしまっているようだった。
不意に──怖いか、と頭の中で友の声が響く。
そういえば、黄泉国の入り口もこんな風だった。目の前にあるはずなのに背後から忍び寄り、背に舌を這わせてくるかのような闇──。
「……」
それは虚無だろうか、混沌だろうか。何の臭いもしない、音もしない、熱くも冷たくもない空間。見たこともないのに世界ができる前の形にも思えて、その圧倒的な無に、知らず知らず指先が鏡の欠片を弄んでいたことに気付いた日嗣はふと自らを嘲るような笑みを浮かべた。
進むにはいっそ何もかもを忘れ、気を違(たが)えた方が楽になれそうな世界。その前で日嗣は一度瞳を閉じ、何の光も灯さぬ下手くそな紐飾りを手首ごと握りしめる。
(……)
この先に誰が待っているのか、自分は知っている気がする。そしてそれがどれだけ正しいかも知っている。また確かに進む先はこちらでいいのだと──根拠の無い何かが胸の奥で訴えてもいて、いつの間にか知らない誰かが、自分の中に棲みついてしまっているようだった。
不意に──怖いか、と頭の中で友の声が響く。
そういえば、黄泉国の入り口もこんな風だった。目の前にあるはずなのに背後から忍び寄り、背に舌を這わせてくるかのような闇──。
「……」
それは虚無だろうか、混沌だろうか。何の臭いもしない、音もしない、熱くも冷たくもない空間。見たこともないのに世界ができる前の形にも思えて、その圧倒的な無に、知らず知らず指先が鏡の欠片を弄んでいたことに気付いた日嗣はふと自らを嘲るような笑みを浮かべた。
進むにはいっそ何もかもを忘れ、気を違(たが)えた方が楽になれそうな世界。その前で日嗣は一度瞳を閉じ、何の光も灯さぬ下手くそな紐飾りを手首ごと握りしめる。

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