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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 (……だが、あの日の神依はまだ足萎えの状態だった。きっと禊が、ずっと抱きかかえていたんだろうな。……)
けれどもそれを想うと何とも言い難い、呑気な靄が頭を覆った。
 こんな時にも関わらず自分は他の男に妬いてしまっているようで、何とかその男の優位に立とうと脳がありったけの甘い記憶を引き出してくる。それは自分でも幼稚な男の嫉妬だと思ったが、今なら女の話をする時の伍名が普段の倍以上も腑抜けた顔をしていた理由や、猿彦がみっともないのろけ話を自慢気にする理由が分かる気がした。きっと今の自分も、そんな感情を面(おもて)に混ぜているに違いない。
 (馬鹿ばかりだ)
なのに、楽しい。
 日嗣は一度大きく笑むと、それに後押しされるよう、ゆっくりとではあったが白鳥居の道を進んだ。
 いくつもいくつも、境界を暴いて。その度に神依の影を想い描いて。
 周りが海と空だけの八衢に降りても、天気が悪い日の夕暮れ時のような、薄明かりと薄暗がりの狭間──目眩を伴うような光の具合は変わらなかった。ただ風が荒れて、空気が音を立てて唸っている。
 その変わらぬ景色の気慰みに、どれほど鳥居をくぐったか数を数えてみたりもしたが、百の目前で飽きてやめた。
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