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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 その視線と、ついぞ抜かれなかった剣に男の優しさを感じながら、ゆっくりと意識を手放していく。
 (……あの方とあの剣ならば、一太刀で私を祓うことができただろうに……私自身も、それを願ったというのに)
そうはならなかった。
(……上から掛けられて救われる言葉や思いやりもあるのね)
 位も血も、権力も……自らの罪ゆえに男が長いあいだ怨み、毛嫌いしたもの。自分を見限った男神が、決してくれはしなかったもの。それは本当は、こんなにも優しく振るうことができるのだと、男は気付いてくれただろうか。
 それだけでは立ち行かないことが存在することは、もちろん分かっている。それが分からないほど蜘蛛神は初い娘ではなかったが、それでも……決してそれだけが、王者の道であるはずもなかった。
 (……)
だから男はもう決して孤独などではなく、神も人も、あらゆる絆を衣に変えて、その身に纏っているような気がした。
 楽しみだった。
 家族皆で過ごす時間を、今度は心から楽しめる気がした。

***

 「……」
そして残された日嗣は、同じく広場に残ったままの木偶と地に縫われた首無し龍をゆっくりと見回す。
 それは誰でもいいと言わんばかりの神々の傲慢と、誰もが同じだという諦感。そして嫉妬に呑まれた女達の怨恨と、色に堕ちた巫女達の自慢や虚飾に使われ、神性を否定されてきた神々の、黄泉国での姿だった。
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