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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
『幸せでした。でも、それは許されませんでした。他の巫女達に妬まれた私は次第に孤立して……ある日、とうとう受けた暴力に耐えきれず、男神に助けを求めました』
──初めてできた、子供でした。
そう続けられた言葉に、日嗣は女が真に喪ったものを悟り眉根を寄せる。今にも泣き出しそうな、割れた声で紡がれた悲劇。
『けれど、愛した神はもう私を見てなどくれませんでした。毎夜毎夜、ただ泣き喚き癇癪のように慰めを求めた私を、神は次第に疎ましく思うようになったのでしょう。やがてお降り下さることもなくなって──たった一つ求めたものすら与えられず、それ以上のものを無くして絶望した私は、自ら滝壺に身を投げたのです』
「お前は──」
そこまでを聞いて、神依の姿をした女の正体に気付いた日嗣は目を見開く。
水の気を帯びた巫女。不思議と嫌な気配を感じなかったのは、おそらく彼女がとても神依に近しくて……また一度は触れ合い、今もその細やかな神威を帯びた布や糸を、日嗣自身が身に付けていたからに違いなかった。
「……だからお前は……神依の前に姿を現したのか」
『……』
正体を暴かれた女は、ふっと顔を上げて日嗣を見上げる。しかしまたすぐに目を伏せると、先程と同じように頭を横に振った。
──初めてできた、子供でした。
そう続けられた言葉に、日嗣は女が真に喪ったものを悟り眉根を寄せる。今にも泣き出しそうな、割れた声で紡がれた悲劇。
『けれど、愛した神はもう私を見てなどくれませんでした。毎夜毎夜、ただ泣き喚き癇癪のように慰めを求めた私を、神は次第に疎ましく思うようになったのでしょう。やがてお降り下さることもなくなって──たった一つ求めたものすら与えられず、それ以上のものを無くして絶望した私は、自ら滝壺に身を投げたのです』
「お前は──」
そこまでを聞いて、神依の姿をした女の正体に気付いた日嗣は目を見開く。
水の気を帯びた巫女。不思議と嫌な気配を感じなかったのは、おそらく彼女がとても神依に近しくて……また一度は触れ合い、今もその細やかな神威を帯びた布や糸を、日嗣自身が身に付けていたからに違いなかった。
「……だからお前は……神依の前に姿を現したのか」
『……』
正体を暴かれた女は、ふっと顔を上げて日嗣を見上げる。しかしまたすぐに目を伏せると、先程と同じように頭を横に振った。

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