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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 或いは、日嗣が視たもの聞いたものは、月夜の安らぎと癒しを司る宝の勾玉が作り出した幻想に過ぎないのかもしれなかったが、それでも日嗣は久しぶりに穏やかな眠りを得ることができた。

 しかし次に目を開いた時──無慈悲にも周りの世界は一変しており、再びあの昏(くら)い想いが渦巻く黄泉の、中でも最も見知った場所に、日嗣は立たされることになった。


【4】

 どれほど眠っていたのか、やはり日嗣には分からなかった。ただ目覚めた時、明らかに今までと比べて頭や体はすっきりとしていて、黄泉国に降りてから最も良い目覚めだとすら思った。
 それから自分が何かを握っていることに気付いて、神楽鈴の存在を思い出す。荷も置いた場所にあって、日嗣は五色布をたたむと再びその中へと鈴を戻した。
 その流れのまま、今度は解いてしまった髪や鎧などの身支度を再び整えようと更に自分の周りを見回すが、目をつむる前の記憶に比べてやけに視界が狭くなっていることにふと気付く。
 もともと昼夜の区別が無い世界ではあったが、その常夜も更けたのだろうか。
 (……雨)
しかしその直後鼻先に雨粒が落ちてきて、それが髪や肌を直に濡らしていることに気付いた日嗣は、傍らの剣を掴むと慌てて立ち上がった。世界が変わっている。
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