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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 (……そうか)
それで、この神楽鈴はやはり巫女が持ち、神のために鳴らすものなのだと改めて理解する。器は持てても、内包する楽までは日嗣には喚べなかった。
(……やはり、お前でなければ駄目なんだ──)
日嗣は腕を下ろすと、胸元に鈴を置き目をつむる。
 そうすれば、神楽殿の時のようにまた何か視えるのではないかと思った。神依と通じることができるのではないかと思った。
 「……」
視界を閉じた分、耳に届く雨音が大きくなる。それだけに集中して神依の気配を探れば、その水の音に誘(いざな)われるように、あの時と同じ水面のようなものが意識の中に落ち込んできた。
 するとふわりと、魂が心地よい浮遊感に包まれる。辺りは暗くてよく分からなかったが、ただ、その水が荒れていないことだけ分かって安堵した。時折小さな小さな波が光ってきらきらしていて、小魚が遊んでいるようにすら見える。
 やがてその小さな光が一つ、こちらに気付いたようにぴたりと停まり、くるりと身を翻して丸くなる。そこからぽつぽつと白い、蝋燭の灯りのような光が等間隔に迫ってきて、日嗣はすぐにそれが道しるべなのだと分かった。
 水を行く者を導くもの。澪標(みおつくし)──。
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