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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
 少しは怪我も癒えたのだろうか。この暗闇に呑まれて、余計に気を沈ませているかもしれない。髪のことはきっと、泣くだろうが……。
(こんなことになるなら……撫でてやらなければ良かったな……)
きっと神依は、そういうことを余計に思い出して泣いてしまうに違いないから──。
 「……」
日嗣はため息を吐いて立ち上がり、戸口に向かう。
 自分の前ではいつも涙を隠そうとする、いじらしい娘だった。だから今度こそ、自分がそれら全てを受け止めてやれる存在になりたかったのに、まだ手が届かない。
 戸を引けば、雨粒がざっと吹き込んできた。雨脚が強まっている。黄泉の者もこの雨になりを潜めているのか、視界の中に動くものは見付けられない。だからこうして眺める分には、本当に雨夜の淡島の中に佇んでいるようだった。
 「……」
手だけ差し出して纏う神気を強めるも、避けてくれる様子はない。
(……止むまで、待つしかないか)
氷雨に体を冷やすのは避けたい。日嗣は戸を閉め、再び中へ籠ることを決めた。
 とにかく数日来、動き回り過ぎた。少しきちんと休むのもいいだろうと、ここに来て初めてゆっくりと、本格的に鎧や髪を解く。
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