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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
【3】
それから、更に数日。
「!」
薄い壁板に寄りかかって浅い眠りを繰り返していた日嗣は、ざわりと首筋に何かが蠢く感触を得、即座に目を開きそれを振り払った。
すぐに少し離れた所で何かが落ちたような音がして、ひとまずは息を吐く。ただの虫だろう。しかし微睡みの心地は吹き飛び、嫌な汗だけが皮膚に滲んだ。
ややあって、気分が落ち着いてくると何かいつもと違うさざめきが耳に伝わってくるのに気付く。どこか、何か……気が安らぐ音。
昨日寝床に選んだのは、おそらく淡島であろう農村部の、畦道(あぜみち)の脇に放置されたいびつな物置小屋だったのだが──その屋根を、水がぱたぱたと叩いている。
小窓を開ければ辺りにはうっすらと霧が立ち込め、小雨が降っていた。
「…………」
黄泉国で見る初めての、天動。
(道理で……肌寒いわけだ)
それは日嗣が最後に友と──人と言葉を交わし、七日余り経った日のことだった。
目が冴えてしまった日嗣は水で口を濯ぎ、二口三口乾物をかじる。水は腐らぬ神泉のものを汲んできたが、やはり時を置くとその風味も変わる気がした。
或いは、そう感じるのは自身の心が腐ってきたからかもしれない。
それから、更に数日。
「!」
薄い壁板に寄りかかって浅い眠りを繰り返していた日嗣は、ざわりと首筋に何かが蠢く感触を得、即座に目を開きそれを振り払った。
すぐに少し離れた所で何かが落ちたような音がして、ひとまずは息を吐く。ただの虫だろう。しかし微睡みの心地は吹き飛び、嫌な汗だけが皮膚に滲んだ。
ややあって、気分が落ち着いてくると何かいつもと違うさざめきが耳に伝わってくるのに気付く。どこか、何か……気が安らぐ音。
昨日寝床に選んだのは、おそらく淡島であろう農村部の、畦道(あぜみち)の脇に放置されたいびつな物置小屋だったのだが──その屋根を、水がぱたぱたと叩いている。
小窓を開ければ辺りにはうっすらと霧が立ち込め、小雨が降っていた。
「…………」
黄泉国で見る初めての、天動。
(道理で……肌寒いわけだ)
それは日嗣が最後に友と──人と言葉を交わし、七日余り経った日のことだった。
目が冴えてしまった日嗣は水で口を濯ぎ、二口三口乾物をかじる。水は腐らぬ神泉のものを汲んできたが、やはり時を置くとその風味も変わる気がした。
或いは、そう感じるのは自身の心が腐ってきたからかもしれない。

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