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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
「──ッ」
更にすぐ近くから人の呻き声が聞こえて足元を見れば、いつの間にか……おそらく始父が目の当たりにしたような黄泉国の亡者が岩肌を這い登ってきていた。
黒く窪んだ眼球、しゃれこうべのままに耳の下からぱっくりと開かれた口。下を流れる泥のように腐ったものや正反対に干からびたものが、何体も何体も折り重なって上へ上へと向かっている。
──日嗣は一瞬、襲われると思った。
それは世界が異物を排除しようとする当然の摂理で、けれども日嗣が後ずされば亡者は頭(かぶり)を振って救いを求めるかのように手を伸ばしてくる。
それですぐに、これらは人食いの自然から逃げようとしているのだと気付いた。神たる自分にすがって、我先にと他人を踏み台にして。
肉が潰されれば耐え難い悪臭までせり上がってきて、生理的に胃の底から吐き気を催す。
外界の理を離れ、逆転を果たした食物連鎖。しかしその食う者食われる者、どちらの味方をしてやることも稲穂の神たる日嗣にはできない。穂は水や土や、そこに住む生物の営みが無ければ生きていけない。人の手を借りなければ、何にもなれない。
ただこの豊葦原にはその“程度”を間違えた人間を恨む万の神がいて、こぞって人の世界を虐めている。
更にすぐ近くから人の呻き声が聞こえて足元を見れば、いつの間にか……おそらく始父が目の当たりにしたような黄泉国の亡者が岩肌を這い登ってきていた。
黒く窪んだ眼球、しゃれこうべのままに耳の下からぱっくりと開かれた口。下を流れる泥のように腐ったものや正反対に干からびたものが、何体も何体も折り重なって上へ上へと向かっている。
──日嗣は一瞬、襲われると思った。
それは世界が異物を排除しようとする当然の摂理で、けれども日嗣が後ずされば亡者は頭(かぶり)を振って救いを求めるかのように手を伸ばしてくる。
それですぐに、これらは人食いの自然から逃げようとしているのだと気付いた。神たる自分にすがって、我先にと他人を踏み台にして。
肉が潰されれば耐え難い悪臭までせり上がってきて、生理的に胃の底から吐き気を催す。
外界の理を離れ、逆転を果たした食物連鎖。しかしその食う者食われる者、どちらの味方をしてやることも稲穂の神たる日嗣にはできない。穂は水や土や、そこに住む生物の営みが無ければ生きていけない。人の手を借りなければ、何にもなれない。
ただこの豊葦原にはその“程度”を間違えた人間を恨む万の神がいて、こぞって人の世界を虐めている。

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