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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
その際立って角ばった建物の群れは見渡す限りに広がっていたが、地はどろどろとした泥の川に覆われ、建物やその周りの看板や鉄の柱を少しずつ少しずつ呑み込んでいる。
更に遥か遠く、山かと思っていた稜線が形を変え、まるで裏返るようにがばりと大きく口を開けた。すると目を突き刺すような光が皆一斉に点滅して、建物自体が意思を持ったように泥の中を蠢き始める。
或いは押し流されているだけだったかもしれないが──遠くからじわじわと、熊や鰐のような赤黒い口腔と鋭い牙が迫る。
その獣の意思を宿した黒い山は、端から街にかぶりついて身を捩り、引きちぎったり噛み砕いたりしながら、けれども毒でも食らったように瓦礫を吐き捨てていった。そこから伸びた泥の蔓が鉄の塔に巻き付けば、時間を早送りしたようにぼろぼろと、金属すら瞬きの間に腐食させていく。
山の反乱に惑う建物は全てに眩しいくらい美しい白の明かりが灯っていたが、その中ではやはり人の形をしたもの達が窓にへばりついて何かを叫び、そのまま転がる建物共々横倒しになっていたり、こんな惨事にも関わらず、まるで縛り付けられているかのように脚の長い椅子に座って机に向かったまま、建物ごと逆さまになっている者もいた。日嗣には理解できない、異様な光景。
更に遥か遠く、山かと思っていた稜線が形を変え、まるで裏返るようにがばりと大きく口を開けた。すると目を突き刺すような光が皆一斉に点滅して、建物自体が意思を持ったように泥の中を蠢き始める。
或いは押し流されているだけだったかもしれないが──遠くからじわじわと、熊や鰐のような赤黒い口腔と鋭い牙が迫る。
その獣の意思を宿した黒い山は、端から街にかぶりついて身を捩り、引きちぎったり噛み砕いたりしながら、けれども毒でも食らったように瓦礫を吐き捨てていった。そこから伸びた泥の蔓が鉄の塔に巻き付けば、時間を早送りしたようにぼろぼろと、金属すら瞬きの間に腐食させていく。
山の反乱に惑う建物は全てに眩しいくらい美しい白の明かりが灯っていたが、その中ではやはり人の形をしたもの達が窓にへばりついて何かを叫び、そのまま転がる建物共々横倒しになっていたり、こんな惨事にも関わらず、まるで縛り付けられているかのように脚の長い椅子に座って机に向かったまま、建物ごと逆さまになっている者もいた。日嗣には理解できない、異様な光景。

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