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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
【2】

 「──……」
そうして進んだ先は、やはり洞窟の中だった。
 今来た場所がどうなっているのか、振り向きかけて、やめる。何の意味もないとは分かっているが、始父がした過ちに通じるような気がしてできなかった。
 幸い行く先に出口は見えていた。ここよりかは幾分明るい。だが、その視界の中には既に黄泉の者だと思える何かが蠢いているのも映って、躊躇わずに剣を抜く。
 神依の周りで何度か目にしてきたものと同じ、汚泥の塊。それは人に近い形をするものもあったし、獣や爬虫類が混ざったようなものもあった。形を成さず、岩に紛れてぶよぶよと波打つものもあったが、大抵は突如現れた光に戸惑ったように道を空けてくれる。
 (これがお祖母様の“御威光”か……)
人々でさえ、直視をすれば目を傷める日輪の光。天照の代とされた鏡の欠片は、砕かれてなおその神性を保っていた。
 それでも日嗣は自身の感覚を鈍らせることなく、出口に向かう。進むに連れ背後からはひそひそと囁くような声が聞こえてきて、それで意図的に一番近い泥の塊に目を遣ったが、少なくとも日嗣にはその泥の中に感覚を司る気管を見出だすことはできなかった。
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