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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
呟けば、洞の奥を見ていた猿彦が振り向いて頷いた。
「見てくれも似てるが、どっちも異界に繋がってるって点では同じだろうな」
横に日嗣が並ぶと、猿彦は再び洞窟の奥に視線を戻して中へと友を誘う。
境を視る猿彦にはこの闇も見通せぬものではなかったらしいが、慣れぬ目に日嗣が足を踏み出すのをためらえば、腰の垂飾品に混ぜた天照の鏡の欠片が朧に光を生み出し行く先を示してくれた。さすが、明るい。自分の周りだけ夕明かりが残ったようだった。
洞に入れば、一層冷えた空気が日嗣を包み、その感覚を鋭利なものに変えさせる。奥は予想以上に深く、人にこそ近いはずだった死が自らの背をも撫でてくるような気がした。やはりそれは、神にも人にも逃れ得ず、抗い難いもの。
(……神依……)
それでも、自分はそれを望んでここに在る。
黄泉帰(よみがえ)る。
それを成し遂げるに必要なことが何なのかは分からなかったが、少なくともその意思を捨てぬことと、おそらくこうだろうという勘が道の標になることだけは確信していた。
ただひたすらに、死の先にあるものを目指して。望んで。信じて。
「……怖いか?」
不意に、前を行く猿彦が口を開く。
「何を──」
「見てくれも似てるが、どっちも異界に繋がってるって点では同じだろうな」
横に日嗣が並ぶと、猿彦は再び洞窟の奥に視線を戻して中へと友を誘う。
境を視る猿彦にはこの闇も見通せぬものではなかったらしいが、慣れぬ目に日嗣が足を踏み出すのをためらえば、腰の垂飾品に混ぜた天照の鏡の欠片が朧に光を生み出し行く先を示してくれた。さすが、明るい。自分の周りだけ夕明かりが残ったようだった。
洞に入れば、一層冷えた空気が日嗣を包み、その感覚を鋭利なものに変えさせる。奥は予想以上に深く、人にこそ近いはずだった死が自らの背をも撫でてくるような気がした。やはりそれは、神にも人にも逃れ得ず、抗い難いもの。
(……神依……)
それでも、自分はそれを望んでここに在る。
黄泉帰(よみがえ)る。
それを成し遂げるに必要なことが何なのかは分からなかったが、少なくともその意思を捨てぬことと、おそらくこうだろうという勘が道の標になることだけは確信していた。
ただひたすらに、死の先にあるものを目指して。望んで。信じて。
「……怖いか?」
不意に、前を行く猿彦が口を開く。
「何を──」

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