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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
その国には黄泉へ通じるとされる場所が数多くあり、或いはその国こそ黄泉国であるとして表裏を暴こうとする者もいたが、当の国津神達に取ってそれは、人が人の好奇心を満たす、それ以上の意味はなさない。
そして中でも猿彦が選んだのは、その国の海に面した海食洞だった。
洞穴は世界からやや奥まって、その口をぽっかりと外界に広げている。また背には斜めに切り立った岩とも山ともいえぬ圧倒的な地層を担ぎ、時の流れを感じさせる苔や鬱蒼とした木々がその岩肌を抱(いだ)いていた。
──しかし辺りには船道具が雑多に積まれ、更にすぐ正面の海には船が幾艘も留められている。豊葦原の日が沈む、西の国の冬の闇に、何事か判別のできない文字が書かれた祠がその脇に見て取れたが──他に神代(かみよ)を感じさせる物も無く、そこはあまりに人々に近しい、黄泉国への入口だった。
(……この国元に生きる者達は、死が恐ろしくないのか。或いはもう未知を恐れないのか、その必要が無いほど受け入れているのか……感ずる術も無いのか)
日嗣は惑うたが、空を覆うような山肌と波の音、潮の匂いは、また脳裏に鮮烈に、あの過去の記憶を思い興させる。
「……まるで、神依を拾い上げたあの浜だな」
そして中でも猿彦が選んだのは、その国の海に面した海食洞だった。
洞穴は世界からやや奥まって、その口をぽっかりと外界に広げている。また背には斜めに切り立った岩とも山ともいえぬ圧倒的な地層を担ぎ、時の流れを感じさせる苔や鬱蒼とした木々がその岩肌を抱(いだ)いていた。
──しかし辺りには船道具が雑多に積まれ、更にすぐ正面の海には船が幾艘も留められている。豊葦原の日が沈む、西の国の冬の闇に、何事か判別のできない文字が書かれた祠がその脇に見て取れたが──他に神代(かみよ)を感じさせる物も無く、そこはあまりに人々に近しい、黄泉国への入口だった。
(……この国元に生きる者達は、死が恐ろしくないのか。或いはもう未知を恐れないのか、その必要が無いほど受け入れているのか……感ずる術も無いのか)
日嗣は惑うたが、空を覆うような山肌と波の音、潮の匂いは、また脳裏に鮮烈に、あの過去の記憶を思い興させる。
「……まるで、神依を拾い上げたあの浜だな」

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