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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第20章 待ち人
【1】

 古来、豊葦原にはあちらこちらに異郷に通じる洞や空間の存在が伝わっていた。
 その多くは山であったり川であったり──そういう特殊な土地には必ず古からの力ある神霊が宿っており、現との境界を曖昧にしていたのだ。
 しかしそれは発展の二文字と共に削られ埋められて、忘れ去られるものも多く、そうでなければ未だに神近い者達によって保護され区切られるか、妄信的に非日常を求める人間達によって霊的な障害をもたらす土地、或いはきらびやかな謳い文句と共に、人の欲を満たすに易い、偽りの聖地へと貶められていった。
 前者ならばまだいいが、後者は穢れが集まり澱みやすくなる。皮肉にもそれは信仰と同じ形で、人々がそれを謳(うた)い信じるがために──元いた神々を違う性質のものに変化させ、悪しきものへと堕落させていく。
 現代の豊葦原に生きる人々の多くは自ら信仰をもたないと口にするが、それはもはや日常に混ざり過ぎて気付いていない……無意識に求め、描き、決め込んでいるだけのものなのかもしれなかった。

 そしてあらゆる道、あらゆる場所に通じる八衢の、その主である猿彦が導いた先は、現代の豊葦原でも未だ信仰が日常に在ることを許される西の国だった。
 かつては長たる伍名が坐し、「神々の国の首都」と人に言わしめた国。
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