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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「そりゃあ、軍神(いくさがみ)みたいなあなたにはそうでしょうとも。でもこの子はあなたと違ってか弱い女の子で、初めての道程なのよ。……それにやっぱり、お腹が空いたら悲しいでしょう」
そう言って櫛名田は握りたてのおにぎりを包んで神依に持たせてくれたが、神依は何よりそれが嬉しかった。きっと一日目で終わってしまう、食糧としては頼りないものだったが、この温もりは他にない。
 それから子龍のための石粒も忘れずに。櫛も大切にしまって、巫女服の上から厚い外套を纏い、足元を照らしてくれる鼠軼の珠を腰に結わえて──沓(くつ)が新しいのだけ心配だったが、塗り薬も飲み薬も、櫛名田はぬかりなく持たせてくれた。
 そして三人で御殿を出て、花染めを繰り返す庭を抜け……ついに門の前までやってきた時、二人は最後の餞別として、神依にあるものを与えてくれた。
 それはまるで透き通る川の、その水面を薄く薄く鋤いたような、軽やかに織られた一枚(ひとひら)の絹織物。
 「ごめんなさいね、私のお古なんだけど……外へ行くなら、きっと身に付けていった方がいいわ。女の子ですもの、うねうねした虫とか、脚がいっぱいある虫は好きじゃないでしょう?」
「えっ……む、虫? そんな虫が出るんですか?」
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