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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「喧嘩しないの。さあ、灯りを消すわよ」
やがて、三人は再び川の字を作る。
 おそらく、もう──二度とはやって来ないだろう時間。一粒、葉から落ちて弾ける朝露のように、目をつむればあっという間に終わってしまう時間。
 だからそれを知る素戔鳴と櫛名田は神依が眠るまで暗闇を見守り、翌日もいつもより少しだけ遅く、布団にこもった熱を味わった。
 不思議な時間だった。けれど眠ってしまえば、何でもない普通の夜だった。ただ、寂しかった。


【6】

 そして別れの時は、素戔鳴と櫛名田二人が望んだように、笑顔のままで迎えられた。
 とにかく櫛名田はあれこれ神依に持たせたがって、邪魔になるからやめろと言う夫に抗議するのにも忙しかった。
 食べ物も着る物も、正直どれだけ必要になるのか分からない。素戔鳴は、流れる時間より心持ちの方が影響する世界だと妻を諌めたが、櫛名田は頑として譲らない。
 特に根の国のものは絶対に口にしてはいけないと言われ、神依は自分が持てる限りの水と保存食を肩掛けの背嚢(はいのう)に詰め込んでもらった。
「淡島の者は神の血を引いておるから、多少は飢えも乾きも耐え凌げる。帰る意思さえあらば問題ないと言うておろうに」
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