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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
すると櫛名田は、感極まったように最後に強く神依を抱きしめると、スンと鼻をすすり、
「──ああ、そうだわ。なら、あなたの着物をもう一度選び直さなくちゃね」
「え?」
年甲斐もなく泣いてしまったことを隠すように殊更明るい声で早口にそう言って、いそいそと布団を抜け出した。
神依もそれに倣い体を起こすと、櫛名田は壁際の大きな桐だんすの引き出しを開け、何かを大切そうに抱えて戻ってくる。
布団の上に置かれる、一包みの畳紙(たとうがみ)。それは着物の収納に使われる和紙で、閉じ口が紐で結ばれていた。
「開けてみて」
「はい。……あっ……」
そして促されるままに神依が紐をほどき紙を広げれば、中には真新しい……けれどもひどく見覚えのある、淡島の巫女服が一枚あつらえられていた。
襷(たすき)もある。地は緑がかった淡い黄色、そしてその上に描かれていたのは鮮やかな──収穫間際の、たわわに実った稲穂の紋。神依が見出だした、日嗣を象徴する豊穣の風景だった。
「これ……」
「……私だって、本当は解っていたの。だからあなたを笑顔で見送れる、良いお母さんになろうとしたのよ。信じてくれた?」
「……疑ったこともありません」
「──ああ、そうだわ。なら、あなたの着物をもう一度選び直さなくちゃね」
「え?」
年甲斐もなく泣いてしまったことを隠すように殊更明るい声で早口にそう言って、いそいそと布団を抜け出した。
神依もそれに倣い体を起こすと、櫛名田は壁際の大きな桐だんすの引き出しを開け、何かを大切そうに抱えて戻ってくる。
布団の上に置かれる、一包みの畳紙(たとうがみ)。それは着物の収納に使われる和紙で、閉じ口が紐で結ばれていた。
「開けてみて」
「はい。……あっ……」
そして促されるままに神依が紐をほどき紙を広げれば、中には真新しい……けれどもひどく見覚えのある、淡島の巫女服が一枚あつらえられていた。
襷(たすき)もある。地は緑がかった淡い黄色、そしてその上に描かれていたのは鮮やかな──収穫間際の、たわわに実った稲穂の紋。神依が見出だした、日嗣を象徴する豊穣の風景だった。
「これ……」
「……私だって、本当は解っていたの。だからあなたを笑顔で見送れる、良いお母さんになろうとしたのよ。信じてくれた?」
「……疑ったこともありません」

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