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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
神依の意思を確かめるように、最後の最後で越え難い、軟らかな壁を造った素戔鳴も、自身を見つめてくるまっすぐ過ぎる眼差しに根負けしたように苦く笑う。
 「……甘ったれの上に我儘で、親の言うことも大人しく聞けんおてんばか」
「お父さん」
「もうよい──我らも神であるが故に、それを巫女であるうぬが信じると言うなら止められぬ。……しかし一度信じたのなら、決してそれを疑うな。疑った瞬間、うぬの目は再び暗闇に閉ざされ、足元の土は汚泥となってうぬを頭から呑み喰らうだろう。──日嗣とも会えぬ」
「──……」
「いいのよ。あなたはただ、あなたが好きになった人と、あなたが本当に帰りたいと思う場所、待つ人のことだけ考えて、歩けばいいの。……希望を失わないこと。ただそれだけが、外の世界であなたがあなたとして存在できる術なの。……あなたは、強い子だもの。きっと、大丈夫よね」
「……はい」
それまで黙っていた櫛名田が、背後から抱きしめるように腕を伸ばしてくれる。すぐにぎゅ、と優しく力がこめられて、衿口にぽつりと冷たいものが一粒零れた。その慈しみを神依は背中いっぱいで感じて、回された手を、その細い指先を自らの手のひらで抱く。
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