この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
しかしそれは同時に、素戔鳴の心にも確かに一片の寂しさをもたらす。
「あの鼠神には、辛い役を担ってもらった。にも関わらず、それ以上に余らが幸せであるのも道理が立つまい。……きっと潔い身の振り方も、示してくれたのであろうな」
「そうね……難しくて、悲しいわね。子の行く末を案じて引き留めるのは間違いなく親の愛情なのに、その子の邪魔をしないのもまた、親の役目でもあるのだもの。
……ね、神依。あなたがいつかお母さんになって、もしも今夜のことを思い出す時が来たなら──私の我儘も、きっと水に流してちょうだいね」
「……」
そんな日が来るのだろうかと思いながらも神依が頷けば、長く息を吐いた後、再び素戔鳴が静かにそれを告げた。
「……もう少しここに居らば、日嗣が迎えに来たかもしれぬぞ」
「……え?」
そしてその、思いがけない言葉に神依は目を大きく見開いて顔を上げる。
「腑抜けておったとはいえ、あれも我が父からの流れを直にその身と魂に汲む者だ。好いた者を求める、その激情を曇らせられるものもなし──降りてくるであろうな」
「そ……そんな。……本当に……日嗣様が?」
怖々と、心からすがるような目でそれを問われた素戔鳴は、ただ静かに是と頷いた。
「あの鼠神には、辛い役を担ってもらった。にも関わらず、それ以上に余らが幸せであるのも道理が立つまい。……きっと潔い身の振り方も、示してくれたのであろうな」
「そうね……難しくて、悲しいわね。子の行く末を案じて引き留めるのは間違いなく親の愛情なのに、その子の邪魔をしないのもまた、親の役目でもあるのだもの。
……ね、神依。あなたがいつかお母さんになって、もしも今夜のことを思い出す時が来たなら──私の我儘も、きっと水に流してちょうだいね」
「……」
そんな日が来るのだろうかと思いながらも神依が頷けば、長く息を吐いた後、再び素戔鳴が静かにそれを告げた。
「……もう少しここに居らば、日嗣が迎えに来たかもしれぬぞ」
「……え?」
そしてその、思いがけない言葉に神依は目を大きく見開いて顔を上げる。
「腑抜けておったとはいえ、あれも我が父からの流れを直にその身と魂に汲む者だ。好いた者を求める、その激情を曇らせられるものもなし──降りてくるであろうな」
「そ……そんな。……本当に……日嗣様が?」
怖々と、心からすがるような目でそれを問われた素戔鳴は、ただ静かに是と頷いた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


