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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「ねえ、神依。だけどそれは……すぐにしなければいけないことなの? もう少し、元気になってからでは駄目なの?」
「櫛名田」
「……あなた」
しかしすぐに素戔鳴にたしなめられて、櫛名田は少し唇を尖らせる。
今ばかりは味方をしてくれてもいいのに──。そう責めるように夫を見遣るも、物言わぬ口以上に深い想いを宿す瞳に自身ももう何も言えず、落ち込んだように目を伏せる神依に視線を戻した。
本当は、夫も同じ気持ちなのだ。ただそれを胸に秘めて、その先へ送り出してやろうとしている。
櫛名田は万感の想いをこめて、一度「ああ」と大きく息を吐き出した。
この子がここに来てから、どれだけ経っただろう。長くも短くもない不思議な時間。それでもやはり、母であった時間は楽しかった。
それを愛しく想うのは自分の勝手で、失うのを惜しく思うのは我儘だ。
けれど神依が同じように、子供としての身勝手さや我儘を気負い目を伏せているのなら、……それを互いに感じられたのなら、きっと自分達は良き母子であったに違いない。
「……ごめんなさいね。あなたを困らせるつもりじゃなかったのだけれど……、私も駄目ね。まだ少し、良いお母さんじゃなかったみたい」
「櫛名田」
「……あなた」
しかしすぐに素戔鳴にたしなめられて、櫛名田は少し唇を尖らせる。
今ばかりは味方をしてくれてもいいのに──。そう責めるように夫を見遣るも、物言わぬ口以上に深い想いを宿す瞳に自身ももう何も言えず、落ち込んだように目を伏せる神依に視線を戻した。
本当は、夫も同じ気持ちなのだ。ただそれを胸に秘めて、その先へ送り出してやろうとしている。
櫛名田は万感の想いをこめて、一度「ああ」と大きく息を吐き出した。
この子がここに来てから、どれだけ経っただろう。長くも短くもない不思議な時間。それでもやはり、母であった時間は楽しかった。
それを愛しく想うのは自分の勝手で、失うのを惜しく思うのは我儘だ。
けれど神依が同じように、子供としての身勝手さや我儘を気負い目を伏せているのなら、……それを互いに感じられたのなら、きっと自分達は良き母子であったに違いない。
「……ごめんなさいね。あなたを困らせるつもりじゃなかったのだけれど……、私も駄目ね。まだ少し、良いお母さんじゃなかったみたい」

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