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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「……お留守番、お願いできる?」
それからカゴの中でずっと様子を窺っていた子龍に話し掛ければ、子龍は一度キュウと鳴き、少しだけ寂しそうに、多分頷いた。
それを見た神依は立ち上がって枕だけを抱え、そうっと薄暗い廊下へと踏み出す。
櫛名田が残していってくれた蝋燭は、神依が出ていった後ゆっくりと燃え尽きて……空っぽになった部屋には光と影の染め模様が淡く、ゆらゆらとたゆたうのみになった。
***
素戔鳴の御殿は主の体格に合わせて造られているようで、神依には大きすぎるものが時々あった。
風呂などはそれでも良かったが、物を取りに遣いに出ても手の届かない棚もあったし、あの雨戸のように障子や襖も大きくて──いざこうして素戔鳴や櫛名田の居室に参っても、今はその大きさがそのまま神依の罪悪感の大きさを表しているようだった。
二人には良くしてもらった。なのに自分は、自らが望んだことをこうしてあっさりと反故にしてしまう。
「……」
神依は襖絵の山水を前に立ち尽くし、しかしこのまま引き返す訳にもいかず、声と勇気を振り絞った。
「──あの、素戔鳴様、櫛名田様。まだ……起きていらっしゃいますか? ……神依です」
「神依?」
それからカゴの中でずっと様子を窺っていた子龍に話し掛ければ、子龍は一度キュウと鳴き、少しだけ寂しそうに、多分頷いた。
それを見た神依は立ち上がって枕だけを抱え、そうっと薄暗い廊下へと踏み出す。
櫛名田が残していってくれた蝋燭は、神依が出ていった後ゆっくりと燃え尽きて……空っぽになった部屋には光と影の染め模様が淡く、ゆらゆらとたゆたうのみになった。
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素戔鳴の御殿は主の体格に合わせて造られているようで、神依には大きすぎるものが時々あった。
風呂などはそれでも良かったが、物を取りに遣いに出ても手の届かない棚もあったし、あの雨戸のように障子や襖も大きくて──いざこうして素戔鳴や櫛名田の居室に参っても、今はその大きさがそのまま神依の罪悪感の大きさを表しているようだった。
二人には良くしてもらった。なのに自分は、自らが望んだことをこうしてあっさりと反故にしてしまう。
「……」
神依は襖絵の山水を前に立ち尽くし、しかしこのまま引き返す訳にもいかず、声と勇気を振り絞った。
「──あの、素戔鳴様、櫛名田様。まだ……起きていらっしゃいますか? ……神依です」
「神依?」

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