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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
屋敷神としての生を受け、その家主の人生の岐路に立ち会い……良い方へ送り出してやれることは、屋敷神として幸せにも誇りにも思うべきことだった。そして自分の後を継ぐ者は更に幸福に、笑顔の主を迎え入れることができる。
──できるはずだ。
「……神依」
「は、……っ、は、い……」
もう言葉すら上手く発せられない、いつか見た水晶の粒のような大粒の涙をぽろぽろと溢す神依に、鼠軼はいつにも増して明るく楽しげな声で語り掛ける。
「泣くでない、愛らしい顔が台無しじゃぞ──お主はいつも誰かと笑い、幸せであるべき我が守り家の主であり、巫女であり、儂が神でなければ孫娘じゃ。その孫娘が縫うてくれた座布団だけ持っていけぬのが惜しいが、致し方ない」
「鼠軼……様……」
「息災でな──最初に我が家に来た時の願いは、まだ珠に宿っておるぞ」
「──あ──」
神依が鼠軼と言葉を交わしたのはそれが最後だった。
鼠軼の尾が珠からするりとほどけると、鼠軼はあっという間に獣の……四つ足の鼠の姿に代わり、障子の穴をすり抜けて廊下の方に出ていってしまった。
「…………」
──できるはずだ。
「……神依」
「は、……っ、は、い……」
もう言葉すら上手く発せられない、いつか見た水晶の粒のような大粒の涙をぽろぽろと溢す神依に、鼠軼はいつにも増して明るく楽しげな声で語り掛ける。
「泣くでない、愛らしい顔が台無しじゃぞ──お主はいつも誰かと笑い、幸せであるべき我が守り家の主であり、巫女であり、儂が神でなければ孫娘じゃ。その孫娘が縫うてくれた座布団だけ持っていけぬのが惜しいが、致し方ない」
「鼠軼……様……」
「息災でな──最初に我が家に来た時の願いは、まだ珠に宿っておるぞ」
「──あ──」
神依が鼠軼と言葉を交わしたのはそれが最後だった。
鼠軼の尾が珠からするりとほどけると、鼠軼はあっという間に獣の……四つ足の鼠の姿に代わり、障子の穴をすり抜けて廊下の方に出ていってしまった。
「…………」

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