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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「鼠軼様……わ、私が素戔鳴様にお願いしてみます。私のことも助けて下さったのだから、きっと鼠軼様のことも……」
「いや──もういいんじゃ、神依。儂はもう存分に生きた。幸いこの国には、鼠が住みやすい場所があると聞いてな。儂は儂で新たな時を生き、それに厭(あ)いたらまた次の命に生まれ変わろうと思う。──また、どこかで会えるといいのう。今度も鼠になって、あの家の天井裏にでも住まわせて貰うか」
「鼠軼様……いや……嫌です、そんな……そんなの嫌です」
「神依……」
途端に瞳に滲む光を湛えさせ、震える声でそれを訴える幼い巫女に、鼠軼は一瞬ためらう。
──けれど、鼠軼は今でもあの小島の家の屋敷神であった。
この巫女にはもう一度、あの家で何でもない日々を送ってもらいたい。今ここで味わっているような細やかな幸せを、今度こそ愛する者と紡ぎ、あの家共々また次代の命へと繋いで欲しかった。
彼女が在るべきはこの御殿ではなく──あの小さな家こそが帰るべき場所なのだと、自分の意思で見出だし、決断して欲しかった。
それに何より、屋敷神の役目はその家と住人に加護を与えること。そして笑顔で見送り、出迎えることだ。
「いや──もういいんじゃ、神依。儂はもう存分に生きた。幸いこの国には、鼠が住みやすい場所があると聞いてな。儂は儂で新たな時を生き、それに厭(あ)いたらまた次の命に生まれ変わろうと思う。──また、どこかで会えるといいのう。今度も鼠になって、あの家の天井裏にでも住まわせて貰うか」
「鼠軼様……いや……嫌です、そんな……そんなの嫌です」
「神依……」
途端に瞳に滲む光を湛えさせ、震える声でそれを訴える幼い巫女に、鼠軼は一瞬ためらう。
──けれど、鼠軼は今でもあの小島の家の屋敷神であった。
この巫女にはもう一度、あの家で何でもない日々を送ってもらいたい。今ここで味わっているような細やかな幸せを、今度こそ愛する者と紡ぎ、あの家共々また次代の命へと繋いで欲しかった。
彼女が在るべきはこの御殿ではなく──あの小さな家こそが帰るべき場所なのだと、自分の意思で見出だし、決断して欲しかった。
それに何より、屋敷神の役目はその家と住人に加護を与えること。そして笑顔で見送り、出迎えることだ。

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