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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
 櫛名田はそれに少しだけ眉を下げたが、何を言うでもなく……枕元の灯りだけを残すと、おやすみとだけ告げて退室する。
 「──ほら、あなたはこっち」
「キュウ」
それを見送った神依は、布団に潜り込もうとしていた子龍を抱き上げカゴに向かった。
 カゴの隣にある明かり取りの簾は全て巻き上げられており、今夜は鼠軼が外を眺めている。
 そのおかげで、室内はいつもより明るい気がする。玻璃の向こうにはやはり光の綿毛がゆらりゆらりと舞い落ちて、虚空に染め模様を花開かせていた。藍と紫、朱に橙と──季節外れの、色を違えた朝顔の花模様。
 綺麗だった。特別に、綺麗な気がした。
 神依は子龍をカゴに促し、布団代わりに入れてある布を整えてやる。
「ああ、神依──すまぬが寝る前に、ちょっといいかな」
「? はい」
するとふと気付いたように鼠軼が振り返り、いつものように和やかな笑みを浮かべながら髭を揺らした。

***

 鼠軼が座る小さな赤い座布団は、神依が櫛名田の手を借りて作り上げた手縫いのお手製座布団だった。
 自分で仕上げておきながら少し歪なのが不満だったが、ふかふかで、鼠軼は愛用してくれていた。
 鼠軼はそれを、まるで子を慈しむように小さな手のひらで数回撫ぜると、神依に向かい合うようにちょこんと座った。
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