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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
【4】

 その日の夜も、神依は宛がわれた部屋で櫛名田に髪をとかれていた。
 もはや宛がわれたというにも相応しくない。部屋に溢れるのは可愛らしい和小物や着物達──櫛名田が持ち込んだり神依がねだったりして一気に物が増えたその部屋は、すっかり神依の居室と化していた。
 「はい、いいわよ」
「ありがとうございます」
櫛名田に手渡された小さな鏡で頭のあちこちを映して見れば、最初の頃に見たような刺々しさはなんとか無くなっている。ほうと息を吐けば、櫛名田も微笑んだ。
「またちょっと伸びたわ。きっと御令孫のおかげね」
「……はい」
神依は、まだそれ以上なんと答えていいのかわからない。ただ漠然と、髪や肌が元に戻ったらもう一度会えるのではないかと思っていた。心の奥では、そうでなければ会いたくないとも思う。とにかくあの男の前に立つにはまだ惨めったらしいし、この姿を見て欲しくもなかった。素戔鳴が今は忘れろと言うのも、そういうことなのだろうと……どこか一片の寂しさを覚えながらも、今はそれで自分を納得させていた。
 居心地のいい、停滞。
 それからいつも通り、櫛名田に明日着る着物を選んでもらう。お喋りしたいときや本を読んでもらいたいときは引き留めるのだが、今日はちょうど色々が一段落したところで、神依は大人しく布団に入ることを決めた。
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