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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
素戔鳴の晩酌に付き合いながら自分は酒とつまみ代わりにお茶とお菓子を含んで、寝る前には櫛名田に優しく髪をとかしてもらって。
悪夢にうなされることもなくなり、おやすみなさいもおはようございますも、そこから始まる時間の全てが神依を満たしてくれた。
「のう──神依。お主は今、幸せか?」
「え?」
「いやいや。運び込まれた頃と、随分と顔つきが違うでな。そら、御霊祭の後、しばらく御令孫や猿彦様達と遊びに出ておった時期があったじゃろ。まるであの頃のように、気持ちよう笑うようになった。──あの頃は皆でこうして並んで、共に綿を選り分けたのう。懐かしい──楽しかったぞ」
「鼠軼様……?」
一方で、神依が活力を取り戻せば取り戻すほど、鼠軼は少しだけ寂しそうに昔語りをするようになっていった。
御殿の中の、混ざり合った死生の境界線。神依が生の方へ遠ざかることで、鼠軼もまた、死してなお自らに与えられた役目が何だったのかを考え、自覚するようになっていった。
だから毎夜毎夜、日が変われば変わるほどに離れていく神依のために密やかに──鼠軼は櫛名田から頂戴した神威を、自らが抱く珠に流していく。
悪夢にうなされることもなくなり、おやすみなさいもおはようございますも、そこから始まる時間の全てが神依を満たしてくれた。
「のう──神依。お主は今、幸せか?」
「え?」
「いやいや。運び込まれた頃と、随分と顔つきが違うでな。そら、御霊祭の後、しばらく御令孫や猿彦様達と遊びに出ておった時期があったじゃろ。まるであの頃のように、気持ちよう笑うようになった。──あの頃は皆でこうして並んで、共に綿を選り分けたのう。懐かしい──楽しかったぞ」
「鼠軼様……?」
一方で、神依が活力を取り戻せば取り戻すほど、鼠軼は少しだけ寂しそうに昔語りをするようになっていった。
御殿の中の、混ざり合った死生の境界線。神依が生の方へ遠ざかることで、鼠軼もまた、死してなお自らに与えられた役目が何だったのかを考え、自覚するようになっていった。
だから毎夜毎夜、日が変われば変わるほどに離れていく神依のために密やかに──鼠軼は櫛名田から頂戴した神威を、自らが抱く珠に流していく。

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