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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
滲む視界に映る、そう言う男神の髪はまるで大きな獣の鬣(たてがみ)のようだった。生来のものなのか寝起きだからなのか、ぶわりと広がる長い髪の先が跳ねて、神依はふと斎水分神の背に乗せてもらった時のことを思い出した。
秋の色も夏の夜空も……その記憶どれもが、まどろみに封じていた男の記憶を呼び覚ます。良い香りのする衣、柔らかな抱擁──そして、涙。
「──日嗣様……」
それを神依が目にすることはなかったが、今あたかも神依の瞳を借りて世に現れたように、小菊の上にぽつぽつと玉をなした。素戔鳴はただそれを見守り、少女が落ち着くのを待つ。
「──これは以前、日嗣様が下さったものなんです……」
「……あれも未だ成らぬ神ゆえ、うぬの禊もわきまえておったのだろう。美しく整えられた膳を奉られるより、焦げた飯とうぬの萎れた顔を見る方が楽しく嬉しいものだと──本当に、ようできておる。うぬの臣は、最後までうぬを護っていた」
「護って……、」
それで神依は、ようやく顔を上げ素戔鳴に詰め寄った。
「あの──禊と、童は。禊は怪我を──童は……」
秋の色も夏の夜空も……その記憶どれもが、まどろみに封じていた男の記憶を呼び覚ます。良い香りのする衣、柔らかな抱擁──そして、涙。
「──日嗣様……」
それを神依が目にすることはなかったが、今あたかも神依の瞳を借りて世に現れたように、小菊の上にぽつぽつと玉をなした。素戔鳴はただそれを見守り、少女が落ち着くのを待つ。
「──これは以前、日嗣様が下さったものなんです……」
「……あれも未だ成らぬ神ゆえ、うぬの禊もわきまえておったのだろう。美しく整えられた膳を奉られるより、焦げた飯とうぬの萎れた顔を見る方が楽しく嬉しいものだと──本当に、ようできておる。うぬの臣は、最後までうぬを護っていた」
「護って……、」
それで神依は、ようやく顔を上げ素戔鳴に詰め寄った。
「あの──禊と、童は。禊は怪我を──童は……」

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