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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
あの頃、一番の宝物だった──日嗣から贈られ、髪をとかれた小菊のつげ櫛。
あの時と同じように指先で歯を辿れば、さららと心地好い感触が……心にも伝わった。
「それを依りに、兄が余を淡島に喚んだのだ」
「……月読様が?」
では、あの月の神はもう、あの天降った日から既に全て知っていたことになる。それでもその神は天照の来訪を示唆し、また神依をここに来るよう仕向けていた。
「……月読様は、どうして……」
「兄が何を思うておるかは知らんが、いちいちうぬが案ずることはない。その形(なり)もな──余かてここに訪れた時はうぬと同じ有り様だった。髪と爪を削がれ、それをもって姉上に働いた狼藉への禊ぎに替えるという──。つまりうぬも既に、何かしらの罪より解放され、赦されたということだ。
余を見よ、髪などいくらでも伸びてくる。うぬには更にそれを願った男が二人も居うて、伸びぬ訳もなし──信じられぬなら、余も共に祈ってやろう。片手で事足りるほど数少ない、姉上に物怖じせぬ猛(たけ)き者のよしみだ。それに」
「……?」
「櫛名田がうぬを子と想うなら、余もそれに倣うしかあるまい」
「……っ」
あの時と同じように指先で歯を辿れば、さららと心地好い感触が……心にも伝わった。
「それを依りに、兄が余を淡島に喚んだのだ」
「……月読様が?」
では、あの月の神はもう、あの天降った日から既に全て知っていたことになる。それでもその神は天照の来訪を示唆し、また神依をここに来るよう仕向けていた。
「……月読様は、どうして……」
「兄が何を思うておるかは知らんが、いちいちうぬが案ずることはない。その形(なり)もな──余かてここに訪れた時はうぬと同じ有り様だった。髪と爪を削がれ、それをもって姉上に働いた狼藉への禊ぎに替えるという──。つまりうぬも既に、何かしらの罪より解放され、赦されたということだ。
余を見よ、髪などいくらでも伸びてくる。うぬには更にそれを願った男が二人も居うて、伸びぬ訳もなし──信じられぬなら、余も共に祈ってやろう。片手で事足りるほど数少ない、姉上に物怖じせぬ猛(たけ)き者のよしみだ。それに」
「……?」
「櫛名田がうぬを子と想うなら、余もそれに倣うしかあるまい」
「……っ」

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