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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
「……でも、まだ全部始めたばかりで。縫い物とかも……ここに来て初めて教えてもらいました」
「成程、姉上に勝るとも劣らぬ姫御前だ。うぬの禊は、しばらくうぬを男神に捧げる気はなかったようだな。或いは──こやつのためか」
「えっ……!?」
そうしておもむろに袖から取り出された「あるもの」に、神依は布団ごと転がされた時よりも大きな衝撃を伴って再び声を上げた。
素戔鳴は何も言わずそれを差し出し、けれども神依は受け取ることもできず膝の上で拳を握り、今にも泣きそうな頼りない顔でうつむいてしまう。
「どうしてそれを……」
小さな声でそれだけ囁けば、素戔鳴は再び神依の髪を撫でた。神依は一瞬びくりと肩を震わせるが、すぐに何かに耐えるように目をつむって、瞼に収まり切らなかった涙を一粒こぼす。
固く大きな手と、太い指には不似合いな──しかし、とても優しい仕草。先程とは異なる、繊細な愛撫。
その、髪を流す周期は「あの時」より遥かに短い。それでも神依の脳裏に懐かしい、不器用な感触が戻って、もう一度それを差し出された時には自然と指先がその感触を求めていた。
忘れていた……忘れようとしていた、秋の感触。匂い。
「成程、姉上に勝るとも劣らぬ姫御前だ。うぬの禊は、しばらくうぬを男神に捧げる気はなかったようだな。或いは──こやつのためか」
「えっ……!?」
そうしておもむろに袖から取り出された「あるもの」に、神依は布団ごと転がされた時よりも大きな衝撃を伴って再び声を上げた。
素戔鳴は何も言わずそれを差し出し、けれども神依は受け取ることもできず膝の上で拳を握り、今にも泣きそうな頼りない顔でうつむいてしまう。
「どうしてそれを……」
小さな声でそれだけ囁けば、素戔鳴は再び神依の髪を撫でた。神依は一瞬びくりと肩を震わせるが、すぐに何かに耐えるように目をつむって、瞼に収まり切らなかった涙を一粒こぼす。
固く大きな手と、太い指には不似合いな──しかし、とても優しい仕草。先程とは異なる、繊細な愛撫。
その、髪を流す周期は「あの時」より遥かに短い。それでも神依の脳裏に懐かしい、不器用な感触が戻って、もう一度それを差し出された時には自然と指先がその感触を求めていた。
忘れていた……忘れようとしていた、秋の感触。匂い。

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