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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
 微かに匂う、まごうことなき女の匂い。血とも異なる。
 だが適度な疲労感は心地好く、満足感ももたらしてくれる。それを、体は思い出してくれただろうか。
 縁側に座し隣を示してやれば、娘は庭から流れ込む涼しげな空気に目を細め、ふうーと長く息をついてぺたりと座り込んだ。
 「櫛名田から聞いていたより動けるな。体の巡りが変わったのが分かるか」
「……」
神依が何も言えずばつが悪そうに頷けば、素戔鳴はニッと大きく笑んで応える。それで神依も、おそるおそるではあったが口を開いた。
 「あの……櫛名田様は」
「一日くらい寝坊をさせてやれ──このところのあれと来たら、昼も夜もお前のことに明け暮れて、見ておれん」
「え……」
「新しい着物を仕立てるだの絵本を読むだの、きゃあきゃあと──自分の方が小娘に戻ったようで、目に余る」
それは神依を責める言葉のようにも聞こえたが、続く言葉は野太いながらもどこか愛嬌を含んだ穏やかな口調で、神依はほっと肩の力を抜いた。
 事実、素戔鳴の記憶にあるここ数日の櫛名田は、本当に若返ったかのようにはしゃいでいた。今はもうこの御殿には子供がいないから、いた頃のことを思い出しているのかもしれない。
 だが、たまに甘やかしが過ぎる。
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