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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
***
それからわずかの後。薄暗い御殿の廊下では、素戔鳴の深く重い足音と、神依の軽い小刻みな足音が二つ、縦並びに踏み鳴らされていた。
そしてそんなちぐはぐな不協和音の中、
(……やけに小さいな)
素戔鳴はその見慣れない生き物を肩越しに覗きながら、どうしたものかと適当に考えを巡らせていた。
とりあえず羽織るものだけ羽織って、まだ状況が呑み込めていないような面持ちで後ろを小走りに付いてくる娘。
娘は確かにそこに居るのに存在が希薄で、気配そのものが不思議な程にちっぽけだった。ちょこまかと動き回るリスや鼠とも違う、それより活きる力が上手く巡っておらず、とろとろと身の内に隠らせて心や魂まで萎縮させてしまっている。そのせいで素戔鳴には、これがリスや鼠より小さな小さな生き物に見えてしまっていた。
だからこうして走らせてやれば、(それはもともと歩幅の差があり過ぎて、神依が歩数を稼ぐしかなかったのだが、)血の気も少しは色付き年相応のはつらつさが甦ってくるようだった。娘は意外にも文句も泣き言もこぼさず、親を追う子のようにずっと付いてきた。
だからといって特にどこへ行くか決めているわけでもなかったが、ふと妻が「庭を散歩するときは楽しそう」と語っていたのを思い出して、その庭に面した広い和室に通してやる。
「──ひと働きだ、雨戸を開け」
「あ──は、はい」
上にも広く、大きな雨戸。力仕事には向かなさそうな体躯だったが、これも不思議と娘は苦に思わないようだった。端から端までまた小走りに駆け、やる気があるのか無いのか分からない唸り声と共に全ての雨戸を開き終わると、少しの汗と息切れを携えて戻ってくる。
それからわずかの後。薄暗い御殿の廊下では、素戔鳴の深く重い足音と、神依の軽い小刻みな足音が二つ、縦並びに踏み鳴らされていた。
そしてそんなちぐはぐな不協和音の中、
(……やけに小さいな)
素戔鳴はその見慣れない生き物を肩越しに覗きながら、どうしたものかと適当に考えを巡らせていた。
とりあえず羽織るものだけ羽織って、まだ状況が呑み込めていないような面持ちで後ろを小走りに付いてくる娘。
娘は確かにそこに居るのに存在が希薄で、気配そのものが不思議な程にちっぽけだった。ちょこまかと動き回るリスや鼠とも違う、それより活きる力が上手く巡っておらず、とろとろと身の内に隠らせて心や魂まで萎縮させてしまっている。そのせいで素戔鳴には、これがリスや鼠より小さな小さな生き物に見えてしまっていた。
だからこうして走らせてやれば、(それはもともと歩幅の差があり過ぎて、神依が歩数を稼ぐしかなかったのだが、)血の気も少しは色付き年相応のはつらつさが甦ってくるようだった。娘は意外にも文句も泣き言もこぼさず、親を追う子のようにずっと付いてきた。
だからといって特にどこへ行くか決めているわけでもなかったが、ふと妻が「庭を散歩するときは楽しそう」と語っていたのを思い出して、その庭に面した広い和室に通してやる。
「──ひと働きだ、雨戸を開け」
「あ──は、はい」
上にも広く、大きな雨戸。力仕事には向かなさそうな体躯だったが、これも不思議と娘は苦に思わないようだった。端から端までまた小走りに駆け、やる気があるのか無いのか分からない唸り声と共に全ての雨戸を開き終わると、少しの汗と息切れを携えて戻ってくる。

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