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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
この部屋は御殿の中でも少し高い場所にあり、すだれを上げて明かり取りを覗き込めば、その柔らかな光が浮かぶ幻想的な庭の様子が垣間見えるのだ。
木も流水も、花も……その全てに柔らかく降り積もりいつか消えていく淡い光は、豊葦原からもたらされるのだという。
素戔鳴という神、そして櫛名田という妻神を敬い慕う、人々のあえかな祈り。しかし途絶えることはない──。
それによって彼らは暗闇に光を得て、惑うことなくこの狭間の世界を治めている。
神依が庭に降りられるのは櫛名田と一緒の時で、門より外に出てはいけないと言われていたが、そんな気ももう無かった。この御殿も、許されたごくごく狭い範囲を行き来するだけ。それでも満足だった。
そもそも黄泉国の天地の理がどうなっているのか想像もつかない。根の国というわりには空らしきものがあるし、風が吹けば梢は揺れる。普通の世界のようで、普通の世界ではない。それに門より外には人間に取って危ない場所や良くないものがあるらしいが、そんな所へ一人向こう見ずに飛び出して、何を求めればいいというのか。
(……もう、何もいらない)
木も流水も、花も……その全てに柔らかく降り積もりいつか消えていく淡い光は、豊葦原からもたらされるのだという。
素戔鳴という神、そして櫛名田という妻神を敬い慕う、人々のあえかな祈り。しかし途絶えることはない──。
それによって彼らは暗闇に光を得て、惑うことなくこの狭間の世界を治めている。
神依が庭に降りられるのは櫛名田と一緒の時で、門より外に出てはいけないと言われていたが、そんな気ももう無かった。この御殿も、許されたごくごく狭い範囲を行き来するだけ。それでも満足だった。
そもそも黄泉国の天地の理がどうなっているのか想像もつかない。根の国というわりには空らしきものがあるし、風が吹けば梢は揺れる。普通の世界のようで、普通の世界ではない。それに門より外には人間に取って危ない場所や良くないものがあるらしいが、そんな所へ一人向こう見ずに飛び出して、何を求めればいいというのか。
(……もう、何もいらない)

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