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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
【3】
その朝だか夜だか判らぬ時間、あの夢の中と同じように神依はふと目を覚ました。今はもう、どちらでもいい。
薄闇の中は物音一つしない。もう一度目を閉じたが、頭はすっきりとしていて眠ることはできなかった。寝たふりでも、そのうち本当に眠ってしまうこともある。月の障りのせいもあったが、明らかに寝過ぎな気もした。
仕方なく体を起こし、僅かに洩れる光を頼りに壁の明かり取りの方へ向かう。暗いとはいえ、まったく目が利かぬ訳ではない。御殿の周りにはいつも綿毛のような光が上からふわふわと舞い落ちて、紺や紫の花を透かしたようにほんのりと闇を温めていた。
だがたとえ目の前が真黒の闇だったとしても、神依は火道具に触れることができない。櫛名田は一度、薄暗い御殿を不自由なく歩けるようにと灯りを授けてくれようとしたのだが──神依は火傷を恐れ、また何かそれ以上の恐怖に襲われて、結局火を扱うことはできなかった。その時だけ、泣いて櫛名田を拒絶した。
(……)
明かり取りの下には背の低い、襖張りの古い飾り箪笥があり、鼠軼と子龍が丸くなって眠るカゴが置かれていた。それをそっと避けて腰を下ろせば、そこが今の神依のお気に入りの場所。
その朝だか夜だか判らぬ時間、あの夢の中と同じように神依はふと目を覚ました。今はもう、どちらでもいい。
薄闇の中は物音一つしない。もう一度目を閉じたが、頭はすっきりとしていて眠ることはできなかった。寝たふりでも、そのうち本当に眠ってしまうこともある。月の障りのせいもあったが、明らかに寝過ぎな気もした。
仕方なく体を起こし、僅かに洩れる光を頼りに壁の明かり取りの方へ向かう。暗いとはいえ、まったく目が利かぬ訳ではない。御殿の周りにはいつも綿毛のような光が上からふわふわと舞い落ちて、紺や紫の花を透かしたようにほんのりと闇を温めていた。
だがたとえ目の前が真黒の闇だったとしても、神依は火道具に触れることができない。櫛名田は一度、薄暗い御殿を不自由なく歩けるようにと灯りを授けてくれようとしたのだが──神依は火傷を恐れ、また何かそれ以上の恐怖に襲われて、結局火を扱うことはできなかった。その時だけ、泣いて櫛名田を拒絶した。
(……)
明かり取りの下には背の低い、襖張りの古い飾り箪笥があり、鼠軼と子龍が丸くなって眠るカゴが置かれていた。それをそっと避けて腰を下ろせば、そこが今の神依のお気に入りの場所。

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